映画『この世界の片隅に』をプロデュース! 真木太郎(まき たろう)プロデューサーとは?
真木太郎(まき たろう)さんは、株式会社ジェンコで代表取締役を務めている映像プロデューサーです。
映画『この世界の片隅に』をヒットに導いた立役者とも言われ、多くのアニメ作品で企画プロデュースを任されている真木太郎さんとは、どのような人物なのでしょうか?
この記事では真木太郎さんのプロフィールや担当作品、仕事術などを紹介します。
真木太郎(まき たろう)さんとは?
まずは、真木太郎さんのプロフィールと経歴、そして自ら立ち上げた会社・株式会社ジェンコについて紹介します。
真木太郎さんのプロフィール
生年月日: 1955年5月23日
出身地: 岐阜県高山市
最終学歴: 早稲田大学法学部
Twitterアカウント: @makitaro1997
映像プロデューサーとして映像化する原作の選定や制作資金の調達、制作チームの立ち上げなどを行っている真木太郎さん。映像作品の中でも特にアニメ作品を多く手掛け、これまで制作に携わったアニメは100本以上もの数に上っています。
また、1997年には映像作品の企画プロデュースを専門に行う会社「株式会社ジェンコ」を設立し、実業家としても活躍中です。
真木太郎さんの経歴
真木太郎さんは、テレビドラマ『水戸黄門』シリーズなどの脚本家として有名な宮川一郎(みやがわ いちろう)さんの長男として誕生。
早稲田大学法学部を卒業した1977年、総合映像プロダクション・東北新社に入社します。洋画の買い付けから映画の配給・アニメ制作にも携わり、映像プロデューサーとしての基礎を固めました。
1990年には音楽映像ソフト会社・パイオニアLDC(現NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン)に入社し、アニメ作品をメインに手掛けるように。
1997年にはこれまで培ったノウハウを活かして株式会社ジェンコを設立し、映像プロデューサー兼代表取締役になりました。
2017年には『この世界の片隅に』で、プロデューサーに贈られる日本で唯一の賞・藤本賞を受賞。今では「日本を代表する映像プロデューサー」として、広く名が知られています。
株式会社ジェンコとは
真木太郎さんが立ち上げた株式会社ジェンコは、アニメ作品の企画やプロデュース、資金投資を行う専門会社。
なお、事業内容は「アニメの企画プロデュース」に特化しており、株式会社ジェンコ内でアニメ制作を行うことはありません。
真木太郎さんが株式会社ジェンコ設立に踏み切った理由は、当時勤務していたパイオニアLDCの経営が悪化し、手掛けていたアニメ『天地無用!(てんちむよう)』シリーズのプロデュースに暗雲が立ち込めたから。
携わった作品を継続してプロデュースする目的で設立された株式会社ジェンコですが、その後も多くの人気アニメを世に送り出し、今ではアニメ業界においてなくてはならない存在となっています。
株式会社ジェンコ 公式サイト:GENCO,Inc
真木太郎さんは岐阜県高山市出身
プロフィールでもお伝えした通り、真木太郎さんの出身地は岐阜県高山市。
岐阜県高山市は、大自然や古民家など心あたたまる景色が多く残され、人気アニメ『氷菓(ひょうか)』や『呪術廻戦(じゅじゅつかいせん)』の聖地としても有名ですよね!
真木さんも故郷には思い入れがあるようで、過去には手掛けた作品の特別上映会やトークショーを岐阜県高山市で開催しています。
真木太郎さんが担当した代表作品
ここでは、真木太郎さんが制作に携わったアニメを簡単に紹介します。
『この世界の片隅に』
『この世界の片隅に』は、2016年に公開されたアニメ映画。
本作は、戦時下という困難な状況に置かれても豊かに生きようとする人々の姿を描いた作品です。
真木太郎さんはプロデューサーとして本作に参加し、当時珍しかったクラウドファンディングを制作に取り入れ話題を集めました。
なお、クラウドファンディングを導入した本当の目的は資金調達ではなく作品PR。「クラウドファンディングでアニメを作ろうとしている」と真木太郎さんの手法に注目が集まれば、自然と出資企業が増え制作資金も集まるだろうというもくろみだったのです。
結果、真木太郎さんのもくろみは大当たりして出資や配給を申し出る企業が多く現れたほか、制作された映画はロングラン上映される大ヒット作品となりました。
『あずまんが大王』
『あずまんが大王』は、とある高等学校を舞台にした学園コメディ。
本作は2001年に劇場映画化・2002年にはテレビアニメ化され、真木太郎さんは企画として参加しています。
企画とは制作資金を集めてアニメ作品を立ち上げ、作品に関わる人全員のパイプ役となりながら、予算とクオリティを管理する仕事。アニメ制作の基盤となるポジションが企画であり、アニメづくりのノウハウを熟知していなければ務まりません。
『天間荘の三姉妹 スカイハイ』
『天間荘の三姉妹 スカイハイ』は2022年に公開された実写映画。
真木太郎さんというとアニメプロデュースのイメージが強いかもしれませんが、実は漫画作品の実写化にも多く携わっています。
本作は東日本大震災をきっかけに生まれた作品であり、真木太郎さんは誰もが経験する「身近な人が亡くなる」ことをテーマにしているところに強く惹かれたそうです。
また、本作主演女優・のんさんは『この世界の片隅に』でも声優を務めており、真木太郎さんとのんさんの「再タッグ」も話題を集めました。
真木太郎さんの仕事術
真木太郎さんが映像プロデューサーとして多くのアニメファンから愛されているのは、強い信念と人間味のある仕事術が評価されているからです。
ここからは、真木太郎さんの仕事術について解説します。
前例のないことに挑むチャレンジ精神
『この世界の片隅に』では前例のないクラウドファンディングに挑戦し、一躍有名になった真木太郎さん。
真木さんいわく、前例のないことに挑んでいくのは作品や監督に惚れ込んだ「使命感」であり、やらなきゃいけない!という強い気持ちに突き動かされた結果の行動だといいます。
ちなみに、真木太郎さんが立ち上げた株式会社ジェンコも、実はアニメ業界では異色の存在。
アニメの企画プロデュースは本来なら映像ソフトメーカーや出版社などが行うのが基本であり、企画プロデュースだけを行う専門会社は株式会社ジェンコ以外にほとんど例がありません。
どんな局面でも諦めない粘り強さ
強い使命感を持つからこそ、一度「手掛ける」と決めた作品にはとことん向き合うのも、真木太郎さんの魅力。
たとえば『この世界の片隅に』を制作する際は、営業に行っても出資してくれる企業が現れず、それどころか「当たらない要素しかないからやめておけ」と諭されることもあったのだとか。
各社が当たらないといったのは、ドキュメンタリー調の本作は地味な印象があり、昨今のテンポ重視のアニメとはかけ離れているから。しかし、真木太郎さんはこの「ドキュメンタリー調」にこそ本作の良さがあると考え、制作を頓挫させることも作品のテイストを変えることもしませんでした。
そして結果的に、ドキュメンタリー調を貫いた本作は「キャラクターにリアリティがある」と評価され大ヒットしたのです。
良い作品を作るという信念
真木太郎さんは、自身が行う企画プロデュースの仕事について「半分はお金を集める仕事」だと断言しており「クオリティ」と「スケジュール」、そして「予算」の狭間で苦しむこともあると語っています。
しかし、3つの間で厳しいせめぎ合いが起こっても、どれにも手を抜かず最善を尽くすのが真木太郎さん流。本人曰く「使える手法は全て使う」ため、時には周囲から理解を得られないこともあるそうです。
しかし、真木太郎さんは「ギリギリまでクオリティにこだわって、良い作品を作りたい」という強い信念を持っており、たとえ人に理解されなくても自分ができる最大限を尽くします。
真木太郎さんは「1円でも多く稼ぐ。ひとりでも多くに見せる。それを両立させる」というフレーズをよく口にしているそうで、無理に「当てよう」と考えるのではなく「多くの人に見てもらえる作品を作ろう」と考えているのです。
クリエイターファーストの姿勢
40年以上もアニメ業界で活躍し続けられるのは、真木太郎さんがクリエイターファーストであることも大きな理由でしょう。
真木太郎さんは、自分の手でアニメを制作するわけではないからこそ「映像プロデューサーである自分は、クリエイターがいなければ食えない」と語っています。だからこそ、原作者や監督・スタッフの意見には熱心に耳を傾けるそう。
たとえば日本のアニメ制作の現場では、企画が立ち上がった途端「監督と現場スタッフにお任せ」のような雰囲気になることも多く、完成間近になってクライアントや原作者から大量の修正依頼が届くケースも少なくないと言います。
しかし大量修正する時間やコストがないときも多く、そんな時はカットの尺を変える、別シーンにつなぎ替えるなど、あらゆる手法を尽くして対応するのだそう。
作品に携わる人を誰一人ないがしろにしない真木太郎さんの姿勢は、多くのアニメ制作スタッフからも信頼を集めています。
まとめ
映像プロデューサー・真木太郎さんについて紹介しました。
株式会社ジェンコの代表取締役も務める真木太郎さんは、アニメファンからの信頼も厚いヒットメーカーです。
真木太郎さんおよび株式会社ジェンコがプロデュースする次回作も、要チェックですね!
ライター:カルコレ編集部 ごとうゆき
<参考>
真木太郎プロデューサーが振り返る、もうひとつの「この世界の片隅に」戦記。 【アニメ業界ウォッチング第49回】 - アキバ総研
映画『天間荘の三姉妹』真木太郎プロデューサーインタビュー - インタビュー&レポート | ぴあ関西版WEB
高山で映画「この世界の片隅に」上映会 のんさん、監督、プロデューサー登壇も - 飛騨経済新聞
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