友達のいない1人のくまが心に寄り添ってくれる…「こまりくま」の温かくて愛おしい魅力や誕生秘話を作者・小鳥遊しほ氏にインタビュー|カルコレ通信特別インタビュー(前編)
友達がいなくて、ひとりぼっち。
それでも困っている人や悲しんでいる人に寄り添い、悲しみながらも必死に前を向こうと奮闘している姿に、母性が刺激されるこまりくま。
本記事では、小鳥遊しほさんによって生み出されたこまりくまの誕生秘話や、ファンを想って生み出されるグッズへのこだわりなどをお聞きしました。
困っている友人に送ったイラストがこまりくまに!
LINEスタンプや「日本郵便」のクリエイターズ年賀状など、マルチに活躍しているこまりくま。
今でこそ「くまったなあ」のフレーズに馴染みがありますが、誕生する瞬間はどのようなシチュエーションだったのでしょうか。
ーこまりくまはどのようにして生まれたのですか?
友達からたまたま「困った!」みたいな相談が来たときに、「そりゃあくまったなあ」というフレーズとともに、震えているくまのイラストを送ったのがきっかけですね。当時は「キャラクターを生み出そう!」という気持ちはありませんでした。
ーそのときの友人の反応は?
「何やってんだ(笑)」という感じだったんですけど、せっかくだしTwitterに上げようかなと思いまして。
最初は「くまったなあ」の1コマだったものに、3コマのストーリーをつけてTwitterに上げたんですね。そしたら今までアップしていたイラストより、多くのいいねが付いて「じゃあせっかくなら」ということでイラストをアップし始めました。
ーではもし、その時いいねがたくさんつかなければこまりくまは生まれていなかった…?
そうですそうです!いないですね(笑)
当時友人が困っていなかったら、イラストに描き起こしていなかったら、いいねがつかなかったら…。
小鳥遊さんは「その瞬間に何かを掴んだ感じはなかった」と話していましたが、今日までの積み重ねが人気キャラクターへの架け橋となったようです。
言葉と絵は2つで1つ
「自分の未来は自分で変えよう」「ゆるゆると生きよう」「正しい生き方ってなんだろう」など、筆者自身、小鳥遊さんが紡ぎ出すこまりくまからのメッセージに何度も救われてきました。
心のどこかに棲みつくような温かい言葉やイラストは、どのように生み出されているのかをお聞きしました。
ーTwitterやInstagramにアップされるこまりくまのイラストには、決まって「深いなあ」と思う言葉や、こまりくまの独り言が書かれています。これらの言葉は、どのようにして生まれているんですか?
先に文章を考えているんですよ。まずはお風呂の中とかで文章を考えて、メモ書きみたいな感じで何十個とかストックしています。
ー先にイラストを考えていると思っていました!
結構言われるんですけど、イラストは最後の最後ですね。「絶対このイラストだ!」というものがあれば、それも一緒にメモ書きしています。
ー文章は小鳥遊さん自身の実体験を元に考えているのですか?
自分が思ったことや、自分じゃないにしても友達が悩んでいたことを元にしています。その状況に基づいたイラストの方が、いいねの数で言ったら伸びるというか。
もちろん数字がすべてではないんですが、Twitterではその場の、その人の感情に寄り添うものの方が多くの人の目に留まり、響くのかなと。
でもただ文章を書いて絵を添えるだけではちょっと寂しいので、上の句と下の句みたいな感じでかいたり、こまりくまのセリフっぽくすることでさらに寄り添う感じが出せればいいなと思っています。
うわべの言葉やありきたりなフレーズではなく、実体験や伝えたい感情をもとにSNSへの投稿イラストを作っているという小鳥遊さん。
だからこそ、こまりくまのセリフや置かれている状況に共感し、見守っていたい、応援したいと思うのかもしれませんね。
グッズは「こだわりすぎない」で作る
イラストレーターの方や、クリエイターの方のグッズ販売では、その方のカラーやこだわりがうかがえます。しかし今まで多くのグッズを生み出してきた小鳥遊さんは「こだわらない」というこだわりのもとで、グッズを生み出していると言います。
ー今回カルコレでもグッズ化の話が進んでいますが、それ以外にも小鳥遊さんは常にグッズを発売されているイメージがあります。こまりくまや他のキャラクターをグッズにするときのこだわりってありますか?
こだわりすぎないようにすることがこだわりです。こだわりすぎちゃうと単価の問題が出てくるので…。
あと自分が欲しいものなのか、人にウケるものなのかのバランスを見ています。自分自分ってならないように「売れるものを作ろう」という気持ちやファンの人の声を聞くようにしています。
グッズは自分の作品でもあるけど、人が買うものなので、そのラインを見極めて作っていますね。
ー最近では、愛猫のそばちゃんが病気になってしまったことをきっかけに募金グッズを制作していましたね。病気になったという投稿から、グッズの販売までがすごく早いように感じたのですが…。
まるで“病気になるのがわかっていたかのような早さ”でしたが、そんな訳はなく…(苦笑)
元々どちらかと言えば筆は早い方です。その上、愛猫グッズを作る計画自体は前々からあったので、想定とは違うデザインの方向にはなりましたが普段以上に早く動けました。
今はもう元気になりましたが、当時はそばちゃんが生死を彷徨っている数日間を過ごしていたので泣きそうな気持ちを作品にぶつけていたら5デザインも出来てしまい(笑)ジャンルの違う5種に仕上がったので、せっかくなら「皆さんに好きに選んでもらおう!」と全てグッズ化しました。
自分の好きなものをグッズにするのではなく、ファンの方が使いやすいか、欲しくなるかどうかという第3の視点を常に持っている小鳥遊さん。
ファンの方の意見や、グッズの需要まで見極めて慎重にグッズを作っていることがうかがえました。
キャラグッズが苦手な人にも「こまりくまなら」と思ってもらえる工夫を
インタビュー当日、小鳥遊さんは「OIOI」で販売されていたこまりくまパーカを着て、愛猫・そばちゃんのスマホケースを持っていました。しかし20代の頃はキャラグッズへの嫌悪感があったと言います。キャラグッズを一切身につけなかったという小鳥遊さんに、どのような心境の変化があったのかお聞きしました。
ーこれから作りたい、挑戦したいグッズはありますか?
私はキャラグッズを子供の頃からあまり持たない主義だったので、今の自分は意外という感じです。スマホケースなんかもシンプルな真っ黒とかが好きで。「キャラTなんてもってのほか!」みたいな感じでした。
でも、歳を重ねるごとに“かわいいもの”に対する愛着が湧いてきて…。母性ですかね?(笑)
なので、私みたいな変化を遂げた人やこれから挑戦したい人にも響いたらいいなという感覚はあります。
ーでは、普段キャラグッズを手に取らない人たちに、こまりくまグッズを知ってもらうためにどんな工夫をされているのでしょうか?
この間の「OIOI」さんの出店とお台場のコラボカフェのときは、今までよりデザインをレトロ調、色味はコントラスト強めなものを増やし、幅広い方に手に取ってもらえるよう工夫しました。
今までは女性らしいパステルカラーをメインにしていたんですけど、私自身パステルカラーはめったに着ないので(笑)
ー確かに!原色の服を着ているイメージです。
そうなんです。どうしてもそのギャップに自分でもモヤモヤしていたので、「だったら(その差を)埋めにいこう!」と思って。
例えばファッション業界にいるようなお洒落な男性がファンシーグッズを持っている姿はあまり見ないけど、昔からあるアメカジ風のキャラクターTシャツとかは着ているじゃないですか。そんな雰囲気にすれば、誰でも手を出しやすいかもしれないと思って。
キティちゃんなんかも、ピンク系のギャルっぽいときもあればレトロチックなときもあって。そういう変化は、良い意味で“しょうがないこと”だと思うので、いろんなラインを試していけたらなと思っています。
普段キャラグッズを持たない人にも興味を持ってもらえるように、日々研究を重ねている小鳥遊さん。
小鳥遊さんの絶えない探究心や、ファンのことを思ったグッズ作りがこまりくまが広く受け入れられている秘訣かもしれません。
こまりくまと一緒に成長していく
落書きから生まれたこまりくまは、キャラクターとして生み出されたわけではないからこそ、小鳥遊さんによって試行錯誤されながら歴史を重ねています。これからより多くの人に知られ、愛されるキャラクターになるために、こまりくまは小鳥遊さんとともに日々成長し続けながら、今日も誰かの心の支えになっていることでしょう。
ライター:カルコレ編集部 彅野アン
写真:GEEK PICTURES
【こまりくま】
【小鳥遊しほさん】
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こまりくま作者・小鳥遊しほ氏が“得意なものを全て仕事にする”ための原動力とは|カルコレ通信特別インタビュー(後編)