こまりくま作者・小鳥遊しほ氏が“得意なものを全て仕事にする”ための原動力とは|カルコレ通信特別インタビュー(後編)
ひとりぼっちで友達がいない、けれど人の悲しみや寂しさには寄り添ってくれるこまりくま。
そんな心優しい彼の生みの親である小鳥遊しほさんは、イラストレーターをはじめとしてフードコーティネーターやライター、コラムニストなど、幅広く活動されている人物です。
本記事では、こまりくまを生み出した小鳥遊さん自身の経験談や、こまりくまとの日々についてお話いただきました。
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友達のいない1人のくまが心に寄り添ってくれる…「こまりくま」の温かくて愛おしい魅力や誕生秘話を作者・小鳥遊しほ氏にインタビュー|カルコレ通信特別インタビュー(前編)
飽き性だから1つの職にこだわらない
こまりくまの作者として、フードコーディネーターとして、コラムニストとしてなど、さまざまな一面を持つ小鳥遊さん。いろんな職業を組み合わせながら、アイデンティティあふれる仕事を生み出している背景について伺いました。
ー小鳥遊さんはフードコーディネーターやイラストレーターなど、さまざまな肩書を持っていると思います。なぜ1つの職にこだわらず、いくつかの職業を組み合わせた働き方をしているのですか?
ずばり、飽き性だからです(笑)
色んな職をこなしてると言えば響きはいいですが、1つのことだけを毎日やり続けるというのが私には向いていなくて…。ある種、年中転職し続けているような気持ちです。1本の道を突き進める人のことは心底尊敬してます。
私は例えば仕事が重複していたら、パソコン内で1ページ目は絵の仕事、スライドしたら料理関係の仕事、3ページ目には記事の執筆っていう感じで、5分おきに仕事内容を変えてしまうほど飽き性だし、それがとっても楽しいんです(笑)
あと、「少しでも得意なら伸ばして全部仕事に変えちゃえ!」「求めてもらえるならなんでもやっちゃえ!」みたいな感じですね。
ーそんなに飽き性なんですね!(笑)
フリーランスとして最初の頃は、どのようにお仕事をしていたんですか?
私の場合、イラストレーターとフードコーディネーターの仕事って、同時に始まってるんです。ファッション誌の『mini』(宝島社)でイラストを添えた料理連載がスタートして、その時点で2つから始まっていましたね。ありがたいことにその派生で、「コラムをつけてください」とか「ご自身が出演してください」とかだんだん増えていきました。
職種が増えていくにあたって「これもお仕事としてきちんとやってます!」と言えるくらいはやり切らないと気が済まないので、続けたいものはたくさん経験を積むようにしています。
ー小鳥遊さんの場合、徐々にできるものを増やしつつ、同時にやりたいものを絞っていくということもしているそうですね。
そうですね。ちょっと手を出して楽しいなと思えたとか人に認めてもらえたとか、これは続けられないなーとか、何かしらの材料で判断して増やしたり削ったりしていますね。
色々やっていると、撮る側、作る側、撮られる側、何かを提供する側、お金にしたい人側、 多方面の意見が見えてくるんです。すると立ち回りは上手くなるし、シンプルに会話が楽しくなる。生きてて楽しい!って思います(笑)
活動を始めた頃、小鳥遊さんはよく「器用貧乏」と言われていたそう。今でこそ1つ1つの肩書きに独自性や専門性があるように思えますが、さまざまな方面の仕事を請け負い、向き不向きを実体験しているからこそ得られた賜物なのかもしれません。
探究心の源は「褒められたい」純粋な心
いま小鳥遊さんがなりたい職業は、板前や家政婦、お母さんなど多岐にわたると言います。常に目標やなりたい自分に向かって進んでいく挑戦心は、どこから湧いているのか伺いました。
ー〇〇になりたい、話のネタになるかも!と思える探究心というのは、どんな感情から生まれるんですか?
褒められたい!人に褒められて愛されたい!という気持ちです。
真っ直ぐな欲ですみません(笑)
もちろん自分が何かを得ることも面白いんですけど、色々やることでたくさんの人とコミュニケーションが取れたり誰かの役に立てたりして、会話が増えるのは嬉しいことです。SNSでも、私を見てフリーランスになった!という方からメッセージをもらったりすると嬉しいですね。「一緒にがんばりましょう!」ってなります。
ーちなみに、株式会社おもうつぼを設立されてからは、褒められる頻度は変わりましたか?
褒められるというか、会社にしてからの方がお仕事する相手に認めてもらえたり「対等に見てもらえてるなー」と思うことは増えましたね。27歳で会社をつくるまではビジネスの場に行くと「そこらへんのふわふわした原宿系女子が来ると思ってた」とかちょこちょこ言われてました(笑)
でも会社を作ってからは、ビジネスマンとして見られるので楽ですね。
話題作りにもなったし、個人と違ってちゃんと道筋を立ててお仕事できることが増えたので、会社設立は良かったことしかないです。
2020年から、スパイスの勉強をするためにカレー店での修行をしているという小鳥遊さん。今後も小鳥遊さんの肩書きが追加されたり、更新されることはあるようです。
こまりくまとは時には仲違いすることも!
なんでも探究心を持って挑戦する小鳥遊さんと、その小鳥遊さんから生み出されたひとりぼっちのぬいぐるみ・こまりくま。一見正反対のように見えますが、実際はどうなのでしょうか。小鳥遊さんとこまりくまの関係性について、お伺いしました。
ー小鳥遊さんはこまりくまを純粋に愛していて、育てているような印象があるんですけれども、自分の生み出したキャラクターを愛せる秘訣みたいなものはありますか?
かわいい弟とか我が子みたいな気持ちがある反面、あんまり仲良くない時期なんてのもありましたよ?(笑)
自分のイラストに絶対的な自信を持っているわけではないので、自分が不安定だとこまりくまも不安定、みたいな。描きたいことが溢れてくるならいいんですけど、そうでもない時期はこまりくまと目を合わせられなかったりしますね(笑)
でも結局のところかわいくて。描いているうちにもっと良くしようって欲も出てくる。毎日のようにSNSにアップしていたら本当に分身みたいな感じになって、否が応でも愛が湧くというか。
ーもしイラストを描いているけれども、自分のキャラクターが好きになれないという人がいたら、どんなアドバイスをしますか?
描く頻度が高いのは、もちろん愛にはつながると思います。私の場合は「小鳥遊しほとして発信してしまうと暑苦しい言葉をこまりくまに代弁してもらおう」みたいな作風なので、持ちつ持たれつの関係性。皆さんも、キャラクターが仲間なのか、お世話を焼きたい子どもみたいな存在なのか、そういった何かしらの位置づけが生まれると感情が動くかもしれませんね。
あとはオリジナリティーをつける。私も、ただ単に“めちゃくちゃ可愛いくまさん”を描いてもつまらないな、と思って白目で描いてみたのが始まりです(笑)
困ってる表情や震えている姿など、こまりくま特有の様子を描く時が1番萌えます。
小鳥遊さんいわく、完全に自分と切り離すか、分身として扱うかによってキャラクターの愛し方や関係性も変わってくると言います。小鳥遊さんの場合、こまりくまが分身として言いたいことを代弁してくれるため、お互いを尊重し合う関係性が築けているのかもしれませんね。
根っからのエンターテイナー性とまっすぐな生き様を応援したくなる!
小鳥遊さんの周りには、いわゆる"古参"と呼ばれる10年以上前から応援しているファンが大勢います。
ファンの方々は、純粋すぎるほどまっすぐな生き様と、人を楽しませたいというエンターテイナーな魂に引き寄せられ、小鳥遊さんを応援し続けているのでしょう。
ライター:カルコレ編集部 彅野アン
写真:GEEK PICTURES
【小鳥遊しほさん】
【こまりくま】
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友達のいない1人のくまが心に寄り添ってくれる…「こまりくま」の温かくて愛おしい魅力や誕生秘話を作者・小鳥遊しほ氏にインタビュー|カルコレ通信特別インタビュー(前編)