『チ。-地球の運動について-』ってどんなマンガ? あらすじや作品の魅力、作者について解説|アニメ化決定の話題作
累計売上部数250万部を突破し、数々の漫画賞を受賞した『チ。-地球の運動について-』をご存知でしょうか。
本作は地動説に魅せられた人々の人生を描きながら、好奇心や探究心といった読み手の本能に訴えかけてくるマンガ史に残る傑作です。作品は完結しましたが、アニメ化が決定するなどその勢いは衰えるところを知りません。
この記事では、『チ。-地球の運動について-』のあらすじ、キャラクター、作者の魚豊先生について触れつつ、さまざまな角度から作品の魅力をお伝えしていきます。
『チ。-地球の運動について-』の概要
魚豊(うおと)先生が描く『チ。-地球の運動について-』は、ビックコミックスピリッツにて2020年〜2022年まで連載されていました。単行本は全8集が発売され、累計売上部数は250万部を超えています。
連載が始まるや否や、感度の高いマンガ好きの間で瞬く間に拡散され、その人気はあっという間に全国規模に。芸能界にもファンが多く、好きなマンガとしてその名が度々取り上げられています。
「マンガ大賞2021」では第2位にランクインし「第26回手塚治虫文化賞マンガ大賞」を受賞するなど、常に注目の作品として多くのファンに支持されているのです。
作品は完結しましたが、テレビアニメ『HUNTER×HUNTER』『ちはやふる』『カードキャプターさくら クリアカード編』を担当したマッドハウスによるアニメ化が発表されるなど、その勢いは衰えることを知りません。
アニメーションで『チ。-地球の運動について-』の世界がどのように描かれるのか、期待が高まっています。
- 作者: 魚豊(うおと)
- 掲載誌: ビックコミックスピリッツ(2020年〜2022年)
- 単行本: 全8集
- 主な受賞: マンガ大賞2021第2位・第26回手塚治虫文化賞マンガ大賞
- アニメ制作: マッドハウス(2023年9月時点において放送日は未定)
「チ。ー地球の運動についてー」
— 魚豊 「チ。地球の運動について」「ようこそ!FACTへ」「ひゃくえむ」 (@uotouoto) June 27, 2022
アニメ化決定しました!
制作はマッドハウスさんです!!
嬉し!!!!!
1巻→https://t.co/A5wEAYFbO3
最終巻→https://t.co/nvY9piaC8f https://t.co/i2aeo5TZbE pic.twitter.com/80rNt8lWrR
『チ。-地球の運動について-』とは?あらすじと作品レビュー
『チ。-地球の運動について-』の舞台は15世紀のヨーロッパです。「天動説」が真理とされている世の中で、その真理に背く考え方である「地動説」を提唱しようとする人々がいました。彼らは「異端者」と呼ばれ、その研究がバレてしまえば残酷な方法で拷問・処刑されてしまいます。
物語の冒頭に登場するラファウは聡明で博識な少年です。しかし異端者のフベルトと出会ったことで地動説を知り、その面白さにのめり込んでいきます。やがて地動説の研究に関わっていることが知れ渡り、ラファウは異端者としてマークされることに…。
果たして、ラファウと地動説はどのような運命を辿るのでしょうか。宗教や時代の空気に翻弄されながら、宇宙の真理を追い続けた人々の姿が『チ。-地球の運動について-』では熱く濃厚に描かれていきます。
マンガ大賞は最年少「チ。―地球の運動について―」 手塚治虫文化賞https://t.co/O8fUgicIKG
— 朝日新聞デジタル (@asahicom) April 24, 2022
魚豊さんの24歳でのマンガ大賞受賞は、手塚治虫文化賞史上最年少となります。
【画像】「チ。―地球の運動について―」から(C)魚豊/小学館 pic.twitter.com/xS64TUf4Gl
受け継がれていく意思とロマン
「太陽が宇宙の中心である(太陽の周りを惑星が周っている)」と主張する地動説は16世紀になって確立し、現代を生きる私たちにとっては疑うことのない事実です。
しかし『チ。-地球の運動について-』の舞台である15世紀では「地球が宇宙の中心である」という天動説こそが真理でした。そんな15世紀のヨーロッパで、「地球は本当に宇宙の中心なのだろうか」という疑問に正面から向き合ってきた人々の生き様を描くのが、『チ。-地球の運動について-』です。
おそらく、初めて作品のあらすじを知った読者の多くは「馴染みがない」「難しすぎる」と怪訝な顔をするでしょう。
中世ヨーロッパ、天文学……特別な専門性を持たない多くの読者にとっては、普段強く意識することのない要素ばかりです。そのとっつきにくさについて、魚豊先生自身も「設定だけを知らされたら、僕だったら読まないな」と吐露するほど。
そんなマイナーな題材の作品が、なぜここまで多くの人々の心を動かしているのでしょうか。それは読者である私たちが、地動説を研究する人々の圧倒的な情熱と探究心に魅了されているからにほかなりません。『チ。-地球の運動について-』を読むと、本能が求める知的な欲求は、どんな強靭な暴力にも勝ることがわかります。
天動説が主流であり真実であるという考え方の世界で、それに疑問を呈する人々は残忍な拷問や火炙りに処されるなど、厳しい罰を与えられてきました。そのような迫害を受けながらも、彼らは「真実を知りたい」という欲求に駆られ、地動説の証明に命を燃やし続けます。
思考停止すればあらゆる欲求が満たされる現代では、何かにこれほどの情熱を傾ける必要などありません。だからこそ私たちは登場人物たちの情熱に心を掴まれてしまうのではないでしょうか。
本作には固定の主人公が存在せず、その時々で地動説の証明を託された人々にスポットライトが当たっていきます。やがてその光は、また別の誰かの人生を照らし、その連鎖が繋がっていく。時や場所を超え、地動説の証明に魅了された人々の魂が受け継がれていくのです。
その時間を超越した大きな流れが非常にスリリングで、一種の冒険活劇としても興味をそそられます。
学び、驚き、感動することの尊さを描く
『チ。-地球の運動について-』では、知ることの喜びとそれによる景色の変化がいきいきと描かれています。それは決して難しいことではなく、環境問題について学んだ日からエコな製品が気になるようになった……など、私たちも身近なところで「知ること」による景色の変化を体感しているものです。
情報が統制されていた15世紀においては、新たな学びによる感動はことさらに大きかったはず。第2集以降から登場するオクジーは、学びによる感動を体現する人物として描かれています。
オクジーは世間に蔓延する思想を信仰し、天国にしか希望を見出せない青年でした。読み書きができず、学びとは縁のない生活を送っていましたが、地動説の研究を託されたことで世界の真理に少しずつ近づいていきます。知らなかったことを知り、世界の解像度が上がったことでそれらの美しさに気づいていくのです。
「ずっと前と同じ空を見てるのに、少し前からまるで違く見える。」
「きっと、それが何かを知るということだ。」
(『チ。-地球の運動について-』第3集より引用)
天国へいくことこそが最上の幸福だと信じていたオクジーは、地動説を守るために闘いに身を投じるほど人生観を変えていきます。持たざる者だったオクジーの変化は、わたしたちに学びの尊さとその意味を教えてくれるのです。
「死ぬ怖さなんて、この世を肯定する怖さと比べたら軽いものだ!」
(『チ。-地球の運動について-』第5集より引用)
本作を読む醍醐味は、歴史に名を残すことなく散っていった多くの「異端者」たちの生き様を通して、世界の矛盾を当然のように享受してしまう恐怖を知り、真実を未来へ託す勇敢さに心を動かされることにあります。
学び、驚き、その過程に感動すること。『チ。-地球の運動について-』にはそのすべてが詰まっています。本作に触れ、探求する喜びに心を震わせていただきたいです。
『チ。-地球の運動について-』個性的なタイトルの意味は?専門用語&主要キャラクターも紹介
『チ。-地球の運動について-』に登場する専門用語やキャラクターについて、さらには個性的な『チ。』というタイトルが決定するまでの道のりについてもご紹介していきます。
タイトルとタイトルロゴについて
- タイトルは最初から『チ。』
- 「チ」=知、血、地
- タイトルロゴの句点の軌跡は、先生自らのアイデア
たった1文字のシンプルな『チ。』というタイトルに驚いた方も多いのではないでしょうか。魚豊先生曰く、構想段階からタイトルは『チ。』として発表することを決めていたそうです。
「知性と暴力」をテーマにしたマンガにしたいと思い描いていたこともあり、知性の「知」・暴力から発生する「血」、そこから「知と血」にしようと仮決定。
のちにマンガの題材が「地動説」に決まったことで、地動説の「地」も加わり「『チ。』しかない!」との思いに至ったとのこと。なんだか運命めいたものを感じますね。
さらに、タイトルに文の停止を表す句点(「。」)がついているのも印象的です。タイトルロゴをよく見ると、「。」に軌跡がついているのがわかります。これは先生自らのアイデアで、軌跡をつけることにより「止まっていたものが動き出す」というコンセプトを表現しているそうです。
専門用語
知っていると少しだけ楽しくなる、『チ。-地球の運動について-』に出てくる専門用語を解説します。
- P国:作品の舞台となる国。ポーランドと思われます。
- C教:人々の生活の中心である宗教。キリスト教と思われます。
- 天動説:作中内で真理とされている考え方。「地球が宇宙の中心」「地球の周りを太陽が回っている」
- 地動説:作品内で異端とされる考え方。「太陽が宇宙の中心」「太陽の周りを地球や惑星が回っている」
- 異端者:作中でその多くが地動説を研究している人々を指します。
- 異端審問官:C教の教えに背く異端者を罰する人々を指します。
キャラクター紹介
『チ。-地球の運動について-』は真実を追い求め、未来に託していく物語。そのため、たくさんのキャラクターが登場します。ここではその一部をご紹介します。
ラファウ:聡明で博識な12歳の少年。理屈っぽく合理主義者。若くして大学に合格し、神学を専攻しようとする。趣味の範囲で天文学を学んでいたところ、地動説の研究者・フベルトと出会い感銘をうける。
フベルト:ラファウに接触し、地動説を説いた人物。異端者として投獄されていた。ラファウに地動説の資料を託す。
ノヴァク:異端審問官。本作の悪役。飄々としているようで、任務の遂行に並々ならぬ執念を抱いている。地動説を研究する異端者たちの前に幾度となく立ちはだかる。
オクジー:物腰は柔らかいが、ネガティブ思考の強い青年。驚異的な視力の持ち主。読み書きができない。
バデーニ:教会に籍を置く修道士。知識が豊富で計算力も高い。「知」を追い求めた結果、目を焼かれて田舎村に左遷させられてしまった。
ヨレンタ:オクジー、バデーニと出会う少女。天文研究の助手をしている。頭脳明晰だが「女だから」という理由で研究に参加させてもらえない。
『チ。-地球の運動について-』作者・魚豊先生ってどんな人?
インテリジェンスに溢れ、わたしたちの好奇心を刺激する『チ。-地球の運動について-』を執筆した魚豊先生とは、どんな人物なのでしょうか。謎に包まれた漫画家・魚豊先生を、ご自身へのインタビューなどを元にご紹介します。
- 作者:魚豊(うおと)
- 名前の由来:初めて食べた鱧(はも)の美味しさに感銘をうけ、「鱧」の「魚」と「豊」をペンネームにした。
- マンガ家になったきっかけ:幼少期から絵を描くのが好きで漠然と「マンガ家になりたい」と思っていたが、中学1年生の時に見たアニメ『バクマン。』でマンガ家のなり方を知り、そこから投稿を始めた。
- 影響を受けたマンガ:『寄生獣』『ピンポン』『闇金ウシジマくん』『カイジ』『亜人』『デスノート』
- 影響を受けた文学作品:『三島由紀夫スポーツ論集』
- マンガで1番重要視しているところ:コマ割り
- デビュー作:『ひゃくえむ。』陸上競技の花形「100メートル走」が題材。ずっと全国1位に君臨していた主人公の挫折と再生を通して、誰もが憧れる天才の苦悩について描く。
- 自己分析:無意識下ではネガティブで保守的。そのため意識的な範囲では常に冒険心をもって自己肯定できる道へ進みたい、と思っている。
- 執筆時のお供:芸人のYouTube(芸人さんが大すきとのこと)/ ペン入れ時には音楽
- 現在の連載:『ようこそ!FACT(東京S区第二支部)へ』(マンガワン)2023年より連載開始
- 各種SNS:魚豊先生公式X(旧Twitter)
『チ。-地球の運動について-』を愛する芸能人・著名人
本作は芸能界にも多数のファンがいることで有名です。『チ。-地球の運動について-』を愛する芸能人の方々を一部ご紹介します。
- 津田健次郎さん(声優):魚豊先生とインタビューで対談。単行本第1集発売当初からの大ファンとのこと。番組の企画で「異端審問官ノヴァク役をやりたい」と紹介。実際にマンガの1シーンをアフレコし話題を呼んだ。
関連動画
- ケンドーコバヤシさん(芸人):2021年の「アメトーーク」で本作を紹介。自身の冠番組「漫道コバヤシ」では、2021年の「漫道コバヤシ大賞」に選出。
関連動画
- 麒麟・川島明さん(芸人):「川島・山内のマンガ沼」で本作について詳しく解説。魚豊先生も収録現場に足を運び、インタビューにも答えている。この番組をきっかけにして読者が増えたという情報も。
魚豊先生
— 川島・山内のマンガ沼【公式】 (@manganuma_ytv) May 14, 2021
スタジオにお越し頂き、
マンガそのまま、溢れる熱量で
たくさんの創作裏話・次回作構想まで
お話し頂きました。
本当にありがとうございました🙇♂️
皆さま
描き下ろしサインとイラストです⬇️
ヤバいやつです😍
やっぱり#マンガ沼 へがいらないw#チ。#ひゃくえむ。#魚豊 pic.twitter.com/wysQSn08vS
- ニューヨーク・屋敷裕政さん(芸人):ご自身のYouTubeチャンネルで「今、絶対に読むべきおすすめマンガ」として本作を紹介。
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- 田中道子さん(女優・モデル):マンガだけで月に8万円も課金してしまうというマンガ好き。ご自身へのインタビュー内で好きなマンガとして本作を紹介しています。
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まとめ
『チ。-地球の運動について-』の魅力を、さまざまな角度からお伝えしてきました。
これから控えているアニメ化とともに、改めて原作も注目されることでしょう。未読の方は、ぜひこの機会に手を伸ばしてみてはいかがでしょうか。
ライター:カルコレ通信編集部 あまみん
参考資料
「売れ要素」のない地動説漫画『チ。』が大ヒットしたワケ漫才と漫画に共通する「おもしろくなる原理」
魚豊先生に聞く『チ。』のタイトルに込めた意味|川島・山内のマンガ沼web
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Borderless Talk! ~漫画家・魚豊(うおと)さん~
ついに完結『チ。ー地球の運動についてー』作者・魚豊のエゴとジレンマ「抑制が効く状態は、真の感動ではない」
ビックコミックブロス『チ。-地球の運動について-』
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