恐竜たちの絆の物語を描く絵本作家・宮西 達也(みやにし たつや)さんとは?|ポプラ社・ティラノサウルスシリーズ作者

たくさんの絵本を通して愛や絆を伝えている、宮西 達也(みやにし たつや)さんを知っていますか?

子どもだけでなく、大人の心にも深く響く作品を描く絵本作家です。子どもの思いを言葉にする絵本、パパやママの気持ちに寄り添う絵本、どれも胸を打つ作品ばかり。

その中でもティラノサウルスシリーズは「大切にしなければいけないこと」を考えるきっかけになる絵本です。お金やモノなど目に見えるものではなく優しさや思いやりなどの目に見えないものを大切にすることを宮西先生は伝えています。

本当の強さとは?優しさってどんなもの?と問いかけるストーリーに思わず考えさせられるでしょう。ティラノサウルスシリーズは「本当に大切なものは目に見えないもの」を教えてくれる絵本です。


今回の記事では、宮西先生のギャラリーから車で20分ほどの静岡県沼津市在住で宮西先生ファンの筆者が、宮西先生の作品の魅力やオススメ絵本をご紹介します。また、2017年に実際にギャラリーを訪れた時の貴重な情報と、宮西先生ご本人の魅力もお伝えいたします。

参考
講演依頼.COM 宮西先生の大切なテーマ

  

宮西達也さんのプロフィールとご経歴

1956年静岡県生まれ。日大芸術学部美術学科卒業。

4男2女、6人の子どもを持つパパです。家事子育てに積極的に参加していた宮西パパ。コミュニケーションをとることを大切にしながら子どもに一生懸命向き合ったそうです。

小さな頃から絵を描くことが好きで、絵を描く仕事に就きたいと美術学校に進学します。

大学時代のアルバイト先で色塗りをしたのが絵本との出会いでした。たくさんの絵を描ける絵本の良さを感じたそうです。大学卒業後はグラフィックデザイナーになりましたが、夢であった「絵を描くこと」を選び、絵本を独学しました。描いた絵本の原画を出版社に1年間持ち込み、やっと編集者から声がかかり絵本出版が実現。書店でニコニコしながら自分の絵本を読む親子の姿を見て絵本作家を決意をしたそうです。

宮西先生は絵本作りの他にも、舞台・講演・絵本の読み聞かせなどの活動をしています。それは日本にとどまらず、世界各国の子どもたちにも絵本の素晴らしさを伝えています。
 

参考
ゼットスクエア|Z会 絵本作家 宮西達也さん
佐鳴予備校 スペシャルインタビュー絵本作家へのきっかけ
中日新聞 絵本作家へのきっかけ
CANTAO WEB 家事参加
ゼットスクエア 子育てについて

 

 

「やさしさと思いやり」をテーマにする宮西達也さんの作品

宮西先生の作品作りはテーマを決めることから始まります。その後、テーマに合ったキャラクター作り、絵の描き方、最後にストーリーという流れです。どの作品にも大切なテーマとして「やさしさと思いやり」が描かれています。

宮西先生自身が描いているイラストは、ひと目見ただけで宮西先生の作品だとわかるほど個性的です。鮮やかな色彩で大胆に描かれた独特な絵に目を奪われます。自然や動物などのキャラクターは本物とは少し違う形をしていて、やさしいタッチでやわらかく描かれています。

恐竜たちの表情は豊かで、肉食恐竜ティラノサウルスのつりあがった目も憎めない可愛らしさがあります。作品に合わせてクーピーペンシルや水彩、グラフィックなどと塗り方を変えているそうです。

参考
ラジオ関西トピックス 作品の色
CHANTO WEB 作品作り

 

 

宮西達也さんの人気作品 ティラノサウルスシリーズについて

宮西達也さんといえば、史上最大級の体格を誇る肉食恐竜ティラノサウルスのシリーズが有名です。

2003年シリーズ1作目「おまえうまそうだな」から始まり、作品は全部で15作。国内外で累計1000万部以上発行されている人気シリーズです。見た目が怖く凶暴なティラノサウルスと草食恐竜を通して、愛情・友情・絆が描かれています。

ティラノサウルスシリーズは、読み聞かせをしながら涙がこぼれてしまう感動作です。恐竜に喜ぶ子どものとなりで、主役のティラノサウルスに感情移入し泣いてしまうパパママが続出。大人目線と子供目線、読む年齢、立場によって感じ方が違う絵本なのです。

幅広い年齢層のファンを持つティラノサウルスシリーズは、映画や舞台、TVアニメ化もされています。そして、中国・韓国・台湾・フランスなどで翻訳され世界で親しまれています。

参考
法政大学大学院論文 翻訳について

 

宮西達也さんと恐竜の関係

ティラノサウルスシリーズを作るきっかけは、周りの大人や子どもたちの声からでした。大切なのは「お金やモノ、すごい力」だとみんなが思っていることに疑問を持ったからだそうです。そのお金やモノ・力を象徴するキャラクターとして恐竜、中でも強いティラノサウルスが選ばれました。

宮西先生が大切にしているテーマ「やさしさと思いやり」の象徴は赤ちゃん。1作目はアンキロサウルスの赤ちゃんが登場します。主役のティラノサウルスは、2作目からも小さくてか弱い赤ちゃん恐竜や草食恐竜と出会っていきます。

ティラノサウルスシリーズを描く1番のポイントは時代にあります。ティラノサウルスは白亜紀後期の恐竜です。(白亜紀後期:今から約1億50万〜6600万年前)シリーズで登場する恐竜は、ティラノサウルスと同じ時代に生きていた、トリケラトプスやプテラノドンなどの恐竜たちです。

他にも、子育てを行っていたといわれているマイアサウラをお母さん恐竜にしたりリアリティを出すために恐竜のことをものすごくよく調べて描いたりしています。

宮西先生が恐竜に惹かれる理由は、誰も見たことがないミステリアスな生き物だから。どんな動物かわかっているとしっかり描かなければいけない。だけど恐竜はわからないことが多いので、宮西先生のイマジネーションが存分に描けるからだそうです。 

参考
CHANTAO 恐竜へのこだわり
Wiki 白亜紀後期

 

 

ティラノサウルスシリーズのおすすめ絵本ベスト3

全15作あるティラノサウルスシリーズの中でも特に人気の3作品をご紹介します。

おまえうまそうだな

シリーズ第1弾。2003年第13回けんぶち絵本の里大賞受賞 

ひとりぼっちで生まれた草食恐竜アンキロサウルスの赤ちゃん。最初に出会ったのは最強肉食恐竜ティラノサウルスでした。「ひひひひ…おまえうまそうだな」と、とびかかろうとしたティラノサウルスに、アンキロサウルスの赤ちゃんは「おとうさーん!」としがみつきます。

『おまえ、うまそうだな』と言われたアンキロサウルスの赤ちゃんが、自分の名前は『ウマソウ』だと勘違いしたことから始まる親子愛を描いた作品です。

いつもは怖がられているティラノサウルスですが、ウマソウは「おとうさん」と呼び尊敬します。そんなウマソウに対してティラノサウルスは、愛おしく想う気持ちが芽生えていきます。肉食恐竜としての生きる術を一生懸命教える姿に、父親の深い愛情を感じます。アンキロサウルスの赤ちゃんが本当の家族の元へ帰るラストシーンは、涙をこらえることができません。

 

きみはほんとうにステキだね

シリーズ第3弾。

あばれんぼうでいじわるなティラノサウルスが海に落ちてしまいました。泳げないティラノサウルスを救ったのは、海の中で暮らすエラスモサウルスでした。陸と海、違う環境で暮らすふたりでしたが、お互いに自分たちのことを教えながら毎日一緒に過ごしていました。ある日、海の中のらんぼうものの恐竜にかまれてしまったエラスモサウルス。泳げないティラノサウルスは助けたい一心で海へ飛び込みます。

嫌われもののティラノサウルスが出会った友だちとの友情物語。エラスモサウルスに出会い、ティラノサウルスは初めて「ありがとう」を言えました。たった一人の友だちと楽しく過ごす喜び、友だちを失って声をあげるほどの悲しみ、その両方を味わったティラノサウルスを思うと切ない気持ちでいっぱいになります。無償の愛や友だちの大切さを伝える名作です。

 

あなたをずっとずっとあいしてる

シリーズ第4弾。

草食恐竜のマイアサウラが卵を見つけることから始まります。大切に育てた卵から生まれてきたのは肉食恐竜ティラノサウルスの赤ちゃんでした。自分とは姿の違う赤ちゃんでしたが、マイアサウラのお母さんは自分の子どもと同じように一生懸命育てました。しかし、大きくなったティラノサウルスは自分と同じ姿をしたティラノサウルス(お父さん)に出会い、マイアサウラとの違いに心揺れていきます。

育ての母と実の父、子どもの気持ち、それぞれが切なく交わる感動作。人と違ってもいい、自分らしく生きる、母親の愛情の深さなど、たくさんのメッセージがつまっています。涙で最後まで読みすすめられないかもしれません。

ティラノサウルスシリーズでは満点の星空も見どころです。恐竜の夜のシーンです。2ページにわたって広がる星空にハッとさせられるでしょう。ひとつひとつ丁寧に描かれている星はキラキラと輝きを感じ、思わず夜空を見上げたくなります。宮西先生が北海道で見た星空を、子どもたちに伝えたい思いが込められています。


参考
ほのぼのなごむ世界観!「宮西達也 Newワンダーランド展」開催中/高知県のまとめサイト 高知家の〇〇

 

 

 

宮西達也さんのおすすめ絵本はティラノサウルスシリーズだけじゃない

宮西先生の作品は、赤ちゃんへの読み聞かせ絵本、パパが主役の本、大好きなママの本など幅広くあります。動物が出てくる絵本も数多くありますが、私の子ども2人は「はらぺこヘビくん」が大好きでした。

お散歩をするはらぺこのヘビくんが、りんごやバナナなどの食べものを見つけては「ごっくん!」と食べてしまうお話です。

ヘビくんのお腹が食べたものと同じ形になっている様子に子どもは大笑い。ニョロニョロ、プチプチなどの擬音語がリズミカルで楽しい。「ごっくん」「あ~ん」の言葉は、食事の時によく使っていたので親子の会話がはずみました。

食べるだけというシンプルなお話ですが、へびくんの食べる姿がとにかくおもしろく何回も何回も読みました。裏表紙の裏に書かれているオチが私のお気に入りです。ぜひ一度手に取って読んでみてください。

はらぺこへびくん https://www.poplar.co.jp/book/search/result/archive/3049001.html
【対象年齢】3.4.5歳

ギャラリーTATSU’S GALLERYで「子どもはコレ好きなんだよね」と宮西先生はおっしゃっていました。

 

 

ふるさとに恩返しするのが夢だった宮西達也さん

宮西先生は生まれ育った清水町、隣接する三島市、沼津市に恩返しをするのが夢だったそうです。伊豆箱根鉄道や三島市スタンプラリーとコラボしたり、美術館でのイベントに登場したり、お忙しいなかでも地元を大切にしています。

Facebookの投稿には定期的に宮西先生のメールが投稿されます。

その内容はとてもほのぼのとしていて、宮西先生を身近に感じることができます。講演会訪問先の話から、姪っ子さんに髪を切ってもらった話、ライブトークとサイン会でふらふらになったことなど、飾らないお人柄が伝わるメッセージに癒やされます。

宮西達也ギャラリーがオープン!!

2017年、静岡県三島市にTATSU’S GALLERY(タッズギャラリー)がオープンしました。

地元では有名な三島大通り商店街にある小さなギャラリーですが、入った瞬間から宮西ワールドに引き込まれます。おなじみのティラノサウルスがいたり、原画やジオラマが飾ってあったりと絵本の世界に飛び込んだような時間を過ごせます。

宮西先生がいらっしゃると知り、私は家にある宮西先生の本を全部持ってギャラリーに伺いました。取材中にもかかわらず快く迎えてくださった宮西先生は、目をキラキラさせながらギャラリー内を説明してくださいました。絵本を購入しましたが、なんとレジ係は宮西先生でビックリ。持ち込んだ本すべてにイラストつきのサインも描いてくださりジーンとしました。宮西先生の気さくさや優しさに触れ、ますますファンになってしまいました。

子どもよりも大人の方がワクワクするTATSU’S GALLERYへぜひ一度お出かけください。ギャラリーは不定期オープンです。宮西先生がいらっしゃる時にしか開いていません。現在は予約制となっています。宮西先生の絵本、オリジナルグッズも購入できます。

ギャラリーオフィシャルサイト https://www.facebook.com/TATSUSGALLERY/


参考
三島大通り商店街
三島大通り商店街 ギャラリーのページ
三島市三島商店街 宮西さんのページ

 

清水町ふるさと大使として活躍する宮西達也さん

宮西先生はギャラリーのある三島市のお隣、清水町の出身です。清水町ふるさと大使としても活躍されています。

清水町のイメージキャラクター「ゆうすいくん」は、宮西先生が生みの親です。清水町内を巡回するバス「ゆうすい号」には、車体や車内にゆうすいくんのイラストがたくさん描かれています。目立つので遠くからでもすぐにわかります。とっても可愛いですよ。

「ゆうすいくん」と清水町の魅力がつまった絵本も発売中です。

ドロドロドロンキーとゆうすいくん https://www.poplar.co.jp/book/search/result/archive/3049005.html

 

 

宮西達也さんのプライベート

宮西先生はお風呂が大好きで、ギャラリー近くにある畑毛温泉によく行くそうです。畑毛温泉は「ぬるま湯」が有名で、昔から湯治として利用されてきた温泉です。

宮西先生は2時間ぐらい入り続けてしまうようですよ。じっくり浸かって疲労回復させる、これが大ヒット作品を生む秘策でしょうか…。

参考
CHANTAO 温泉好き
畑毛温泉旅館 温泉について

 

 

まとめ

恐竜を通して人間の内面を描く絵本作家の宮西達也さん。

宮西さんの絵本は親子愛や友情、やさしさや思いやり、たくさんのことを届けてくれる温かい作品ばかりです。幸せ、嬉しい、悲しい、せつない、さまざまな気持ちを味わえ、感性豊かになる要素がたくさん入っています。

宮西先生の絵本を読みながら「目に見えないからこそ大切にしたいもの」について、親子で話すきっかけにしてみてはいかがでしょうか?

 

ライター:カルコレ編集部 こうみ

 

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